米連邦最高裁判所は6月25日、インターネットを使った地上波テレビ放送の再送信サービスを展開するスタートアップ企業「Aereo(エーリオ)」に対し、同社のサービスは著作権侵害に当たるとの判決を下した。米国ではペイテレビと呼ばれるケーブルテレビ(CATV)や衛星放送、さらには電話会社が展開する再送信サービスに加入し地上波テレビ放送を視聴する人が全体の約9割に上るが、エーリオの事業は同サービスに相当。ところが、各テレビ局に無許可で再送信していたことが問題になっていた。
エーリオは10㌣硬貨大の放送受信アンテナを独自開発、加入者1人1人に割り当て直接受信を代行、インターネット上に放送を転送していた。加入者は月額約8㌦を払い、パソコンはもとより、多機能携帯電話(スマホ)やタブレット型多機能情報端末で地上波テレビ放送が見られる仕組み。クラウド技術を使った録画サービスも提供していた。
ところが、同サービスが立ち上がると放送局を傘下に置くウォルト・ディズニーなど米大手メディア企業が一斉に反発。「多額な予算を投じて制作している番組を無断で使用、私腹を肥やしている」などと、エーリオのサービスの即刻停止命令を最高裁に求めていた。
これに対しエーリオ側は、「地上波テレビ放送は誰もが無料で受信・視聴できることが保障されている。料金を徴収しているのは、アンテナの賃貸と録画システムを提供しているからだ」と主張した。しかし、最高裁は、「エーリオの行為は(動画配信とはいえ)“パブリック・パフォーマンス”(公的行動)であるペイテレビ事業者の再送信サービスと何ら変わりない」との判決を下した。
米メディアは、「裁判所が極めて重要な著作権の原則を保障してくれたことに大変満足している。消費者は高品質なコンテンツ(番組)を求めているが、それが守られることになる」などと一斉に歓迎の声明を発表した。ちなみに、放送事業者にとってペイテレビからの再送信料は重要な副収入になっている。
エーリオの最高経営責任者(CEO)、チェット・カノジャ氏は声明の中で、「(最高裁の)判決は、ハイテク業界に身も凍るような悲観的なメッセージを送るもの。消費者の利益が大きく後退するものだ」と語った。
エーリオはニューヨークを皮切りに全米約10ヵ所でサービスを展開していたが、今回の判決で廃業に追い込まれそうだ。