世界のメディア王の異名をとるルパート・マードック氏(写真・左)率いる米娯楽・メディア複合企業「21世紀フォックス」が同業大手である「タイムワーナー」(TW)に対し800億㌦(約8兆円)で買収する提案をしていたことがこのほど明らかになった。TWは提案を拒否したが、「マードック氏は簡単にはあきらめないだろう」との見方が多く、米メディア界を大きく再編される可能性を秘める買収劇の行方に大きな関心が寄せられている。
マードック氏の思惑はTW買収により特大メディアを構築し、米メディア界で圧倒的な影響力を握ること。中でもスポーツ・コンテンツの掌握に大きな狙いがあるようだ。同氏の目標の一つが、ウォルト・ディズニー傘下のスポーツ専門局「ESPN」に対抗できるケーブル局の育成。昨年、同社版ESPN、「Fox sports 1」を立ち上げたが、これまで広告主が最重要視する若者視聴者層(18-49歳)の平均視聴者数は12万2000人と、ESPNの同107万人にまったく歯が立たない状況が続いている。タイムワーナーが保有するNBA(米プロバスケットボール協会)や大学バスケットボール試合の放映権を手中に収め、スポーツ番組プロバイダーとしての優位性を獲得したい考えだ。
「好きな番組を好きな時間に視聴する」タイムシフト視聴が台頭する中、スポーツ生番組は、CM飛ばし視聴されない数少ない番組。広告主もスポンサーになりたい番組の筆頭に挙げている。また、人気スポーツ番組を保有するテレビ局はペイテレビと言われる番組配信事業者に対し、高額な配信料を要求することができる強い立場に立つことが出来るメリットもある。ちなみに、ESPNはペイテレビに対し1世帯当たり業界最高額と言われる6㌦強の配信料を課し、年間約65億㌦以上の売上を得ており、広告収入の倍以上の収入を確保している。
買収の狙いはスポーツに留まらない。米映画界を代表する20世紀フォックス(Fox)とワーナーブラザース(TW)両メジャーを配下に収めればハリウッドで支配的な影響力を握れることも大きな魅力だ。
買収が実現すれば年間売上650億㌦規模のメガメディア企業の誕生となる。
ところで両社は、映画会社や地上波テレビ局に加え数多くの有力ケーブル局を抱えているが、人気ナンバーワンの座を不動のものにしているニュース専門局「Foxニュース・チャンネル」を傘下に置くFoxは買収実現の折にはTW傘下のCNNを売却する意向だという。