タイムシフト視聴は人気番組に集中

米国ではケーブル局が地上波テレビネットワークのプライムタイム(午後811時)番組顔負けの人気番組を放送するようになって久しい。ドラマ番組などの専門チャンネル「AMC」が放送する『Mad Men(マッドメン)』(60年代の広告業界を舞台にしたドラマ)やホラードラマ『ザ・ウォーキング・デッド』などは米テレビ界全体を代表する人気番組にのし上がっている。

 

しかし、これらの人気番組がDVR(デジタル・ビデオ・レコーダー)などを使った追っかけ視聴(タイムシフト視聴)の対象になる筆頭格にもなっており、番組関係者や広告主から懸念が寄せられている。タイムシフト視聴の際にはCMを飛ばしながら視聴するケースが極めて多いからだ。

ケーブル局などを視聴する際に必要な受信機STB(セット・トップ・ボックス)メーカー、TiVo(ティボ)が35万軒のユーザーを対象にした調査結果によれば、マッドメンのタイムシフト視聴者は、その73%がコマーシャルをスキップしながら番組を見ていることが明らかになった。若者向けの人気チャンネル「FX」の刑事ドラマ『Justified 俺の正義(邦題)』や同じくFXの『Fargo』(犯罪ドラマ)などもCM飛ばし率が70%と驚異的な割合になっている。

番組関係者の間には、「CM販売交渉ではこれらのCM飛ばし率が織り込み済み。番組の行方を左右するようなインパクトを与えることはない」などと、楽観論もあるが、長期的には放送事業者に様々な影響を与えそうだ。

地上波テレビNBCネットワークの調査部門担当のアラン・ウォーツェル社長は、米テレビ番組全体のタイムシフト視聴率は、4大ネットワーク(ABCCBSFoxNBC)全体の視聴率に匹敵するほどに急増中であることを指摘(業界誌バラエティー)。「DVRが視聴率ナンバーワンのネットワークになったとも言える」と分析している。 

ニールセン社によれば、200809年シーズンではプライムタイム番組のリアルタイム視聴率が83%、放送日同日のDVR視聴率が8%、放送後3日間のDVR視聴率が7%だったものが、5年後の今、リアルタイム視聴率は27%に急落、逆に同日DVR視聴が75%、放送後3日間は20%とそれぞれ急上昇中だ。

ちなみに、タイムシフト視聴されにくいケーブル局番組の筆頭がリアリティー番組。住宅・ガーデニング情報チャンネルHGTVが放送する『House Hunters (家探し番組)などが挙げられている。同番組のCM飛ばし率は16%に留まっている。

<テレビ朝日アメリカ 北清>