FS1、初年度は人気浮揚ならず 

米メディア企業大手「21世紀フォックス」傘下のスポーツ専門局「Fox Sports 1」(FS1)が開設されて1年が経つが視聴率低迷に悩んでいる。FS1は世界のメディア王の異名をとるルパート・マードック氏の肝いりで、スポーツ専門局の絶対的な王者「ESPN」(ウォルト・ディズニー社傘下)打倒をスローガンに2013年夏立ち上げられた。しかし、初年度のプライムタイム(午後811時)における平均視聴者数は267,000人と、先発のNBC Sports Network(コムキャスト社傘下)の305,000人を追い越すことが出来なかったばかりか、ESPN230万人にはるか遠く及ばなかったことが判明した。

FS1の視聴者数は、市場の予想を大きく下回った模様で、業界内には、「ESPNに迫る健闘ぶりを期待した向きが多かったが、そうはならなかった。期待を裏切られたかたちだ」(広告業界誌アドバタイジング・エイジ)などの意見が上がっている。9月から始まる新シーズンで放送される番組内のCM販売などが行われる“アップフロント”交渉ではFS1向けの広告予算を半減させる広告主も現れたという。

FS1の専務兼ゼネラルマネジャーを務めるデイビット・ネサソン氏は、「今年のアップフロントは全体に低調だったことは誰もが認めるところ。FS1だけが低調だったわけではない。初年度の番組の90%のスポンサーが新シーズンも戻ってくる」と反論している。

米広告大手ホライゾン社の調査部担当上級副社長ブラッド・アドゲイト氏は、米エンターテイメント界の大物オプラ・ウィンフリーさんが立ち上げたケーブル局「OWN Network」が初年度では期待を大きく裏切り不振に終わったものの、その後時間が経つにつれ固定ファンを獲得したことを例に挙げ、「新しいネットワークが定着するまでには時間がかかるのが常だ」とFS1を擁護する。

そして、FS1にとって明るいニュースがないわけではない。初年度の年間視聴者数が期待はずれだったとはいえ、前身の車イベント専門スポーツ局「Speed(スピード)」の視聴者数151,000人を上回ったこと。格闘技番組『Ultimate Fighting Championship』がコンスタントに100万人に迫る視聴者を引き寄せていること。来シーズンには新たに放映権を取得したゴルフ・メジャー大会「USオープン」やナスカーレース『Nascar Sprint Cup』などの中継番組がひかえていること。人気の大学アメフト試合の放送回数が大幅に増えること、などが挙げられている。ネサソン氏は、「我々には長期的計画がある」ことを強調している。

<テレビ朝日アメリカ 北清>