米連邦航空局(FAA)はこのほど、テレビ番組や映画制作に、ドローンと呼ばれる小型無人機の使用を条件付きで認める決定を発表した。今回申請のあったプロダクション会社から「Aerial Mob」社、「Astraeus Aerial」社、「HeliVideo Productions」など合計6社に対し特別許可書を発行した。これまで米国では民間企業によるドローンの飛行は、基本的には禁止されていた。
ドローンはヘリコプターでは不可能な低空飛行撮影などが可能なほか、コストも廉価ですむことから、映画やテレビ番組制作会社から一斉に歓迎の声が上がっている。
米映画メジャー、ソニー・ピクチャーズやパラマウント映画などは『トランスフォーマー/ロストエイジ』(ソニー)や『007 スカイフォール』(パラマウント)などの撮影にドローンを駆使しているが、これまでは米国外での撮影を余儀なくされていた。
ハリウッドの強力なロビー団体、米国映画協会(MPAA)のクリストファー・ドット会長は、「FAAの決断によって、米国内における撮影機運が高まり、新たな雇用をもたらすことにもつながる」と歓迎のコメントを発表したうえ、「ドローンの使用が可能になることで、制作者の間にクリエイティブな発想が生まれる。視聴者や映画ファンにとっても大きな勝利だ」と強調した。米関連団体組織(AUVSI)は、初年度だけでも米国に10万人の雇用を促し、820億㌦規模の経済効果をもたらすと試算している。
FAAが課したドローン撮影に際する条件は、①機材は飛行のたびに点検が行われること②飛行高度は400フィート(約120メートル)以下にとどめること③ドローンの操縦はパイロットとしての免許を保持するものとする⑤飛行プランを事前にFAAに提出すること、などとなっている。
民間企業によるドローン使用は、人口過密地帯で墜落事故があった場合に惨事につながるおそれがあることや、自宅の庭などを克明に撮影されるなどプライバシー侵害につながることを懸念する市民団体などからは反対の声が上がっていた。
現在FAAには40件の申請書が届いているが、FAAはケース・バイ・ケースで審査をしていく模様。業界内には早期の包括的なルールづくりを求める声が多い。また、ドローンを使った撮影は映画やテレビ番組に限らず、大規模な山火事や水害など天災現場の調査や発電所の点検、さらには農作物の生長状況などを調べるうえでも有効とする意見も挙がっている。