インターネットを使ったテレビ番組や映画のオンデマンド配信で圧倒的な人気を博している米Netflix(ネットフリックス)がこのほど発表した新たなサービスが米メディア界に波紋を投げかけている。同社は、米映画会社ワインスタインと共同で2000年にヒット作となった映画『グリーン・デスティニー(英語名:Crouching Tiger, Hidden Dragon)』の続編を制作するが、その配信方法にハリウッドから猛烈な反発が出ている。同映画を2015年8月に完成後、通常の映画よりも大きなサイズの映像が上映できる「アイマックス」劇場で封切ると同時にネットフリックス会員には無料で同時配信するからだ。
米国では映画は封切り後3カ月間は映画館のみで上映されるのが慣例。早期のDVD販売やネット配信などは興行収入に大きな悪影響を与えるからだがネットフリックスの動きはその慣例を打ち砕くものだ。全米の映画館は、「リーガル・エンタテイメント」をはじめ大手3社がほぼ独占していて、息のかかったアイマックスでの同映画上映を拒否する構えだ。アイマックスは大手劇場に運営を委託しており、同映画が上映されるアイマックスは全体の40%に留まると見られている。海外の映画館チェーンもボイコットの動きを見せている。
ネットフリックスのコンテンツ調達最高責任者テッド・サランドス氏は、「(今回の決定は)米消費者がこれまでの映画の公開の仕方に決して満足していないことをハリウッドに知らしめることになる」と強調している。ワインスタインのハービー・ワインスタイン会長も、「映画業界は、映画の新しい配給方法を探求する必要がある。それが新しい時代の流れだ」と、強気の姿勢を崩していない。
米調査会社BTIGリサーチ社のメディア・アナリスト、リッチ・グリーンフィールド氏は、「消費者のニーズを顧みないハリウッドの旧態依然の商行為を打ち下すためには外からの力が必要。ネットフリックスはテレビ業界の常識を変えたが、今度は映画業界が的に選ばれた格好だ」と冷ややかに分析している。
ネットフリックスは、独自制作のドラマ『ハウス・オブ・カーズ』などを全シリーズ一斉配信する新しい手法を採用、番組の“まとめ視聴”やオンデマンド視聴を促進させ米テレビ業界をあっと言わせたが、今度は映画界に衝撃が走っていると言えそうだ。同社では同映画を手始めに複数の独自作品を同手法で配信する予定だ。