米プロバスケットボール協会(NBA)はこのほど、米メディア企業ウォルト・ディズニーとタイムワーナーとの間に結んでいる独占放送契約を更新したと発表した。NBAが両社から勝ち取った放映権料は2016-17年シーズンから9年間で総額240億㌦。年間平均26億6000万㌦は、現行契約料金9億3000万㌦の約3倍にも達する大型契約となった。当初予想されていた倍額レベル(9月4日号既報)を大幅に上回った。
NBAはディズニー傘下の地上波テレビ「ABCネットワーク」とスポーツ専門局「ESPN」、タイムワーナー傘下のケーブル局「TNT」との間に独占放映契約を結んでいるが、8年契約が終了する2015-16年シーズンを待たずに前倒しの契約締結に踏み切った。放送事業者にとってスポーツ番組は高視聴率イコール、高額なCM料金を稼いでくれる“お宝番組”。NBA側は、“目を疑う権料”(市場関係者)を突きつけても両社が放送権死守の覚悟で臨んでくることを見抜いていたようだ。
スポーツ番組はCM飛ばし視聴の恐れがないリアルタイム視聴が集中する番組とあって広告主の間に根強い人気があり、NBAサイドが強気の姿勢を貫くことが出来る環境が整っているとも言えそうだ。
だが、ペイテレビ・サービスと呼ばれる再送信事業者(CATV、衛星放送、電話会社)からは早くも懸念の声が上がっている。放映権を保有するテレビ事業者が人気スポーツ番組をテコにさらなる再送信料や配信料の値上げを突きつけてくるのは必至。ペイテレビがそのつけを消費者に加入料値上げというかたちで回す、という悪循環を生むからだ。
米CATV事業者「メディアコム」は、「消費者がペイテレビに背を向ける動き(コードカッティング)を加速させるものだ。テレビネットワークが時計の針を戻す(権料値下げを要求する)時期がきている」と深い憂慮の念を禁じえない様子。
また、消費者団体(Public Knowledge)などからは、「だれもがスポーツファンであるわけではない。スポーツ番組を放送しないチャンネルをパッケージした(廉価な)料金を提供すべきだ」と述べ、ペイテレビのビジネスモデル改革を呼びかけている。
調査・コンサルティング会社「プライスウォーターハウスクーパーズ」によれば、2014年に米メディアがスポーツ物件に支払う権料は146億㌦。18年には20%増となる176億㌦に膨れ上がる模様で、猛威をふるっているスポーツ旋風の勢力は当面弱まる兆候は見当たらない。