米国ではCATVや衛星放送事業者さらには電話会社が提供する映像配信サービスを「ペイテレビ」と呼んでいる。米消費者の9割が何等かのペイテレビに加入してテレビを見ているのが現状だが、年々値上がりする加入料を嫌った解約傾向が顕著になっている。解約者はペイテレビとつながるコードをカットする、という意味から“コードカッター”などと呼ばれていて、特に広告主が重視する若者層に多い点に懸念が寄せられている。10月中旬、そのコードカッターに朗報が続いた。
まず先陣を切ったのが有料チャンネルの大御所「HBO」。同チャンネルをストリーミング配信する新サービスを来年スタートさせると発表した。HBOは『ザ・ソプラノス 哀愁のマフィア(邦題)』やファンタジー・ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』など、米テレビ界最高の栄誉とされるエミー賞受賞作の宝庫。ペイテレビに加入しなくても「あのHBOが見られるようになる」とあって、コードカッターから歓迎の声が上がっている。但し、料金や具体的な配信内容の詳細などは現時点では明らかにされていない。
そしてHBOの動画配信サービス発表の翌日(10月16日)、今度は地上波テレビCBSネットワークなどを傘下に置くCBSコーポレーションがいきなりストリーミング配信「CBS All Access(オール・アクセス)」を同日開始したと発表した。月額5.99㌦の有料サービス。CBS直営局の生放送が視聴できるほか、人気番組『NCIS ネイビー犯罪捜査班(邦題)』や米テレビ界を代表する人気コメディー番組『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則(邦題)』などがオンデマンド視聴できる。傘下の制作会社CBSスタジオが制作したテレビ番組『スタートレック』など往年の番組にもアクセスが可能だ。但し、人気のNFL(米プロフットボール協会)中継試合番組は視聴できない。
大手2社が相次いで進出を決めたネット配信事業に、米報道機関からは、「テレビ(放送)時代の終焉?!」「新たなアラカルト・テレビ時代(視聴者が任意に選べるチャンネル)の幕開き」「テレビ番組のネット配信に新たな分岐点」などと、大きな反響が巻き起こっている。
両社の動きは、今や5000万人以上の会員を抱える動画配信サービス最大手「ネットフリックス」人気に触発されたものが、「行き過ぎればペイテレビとの関係にひびが入る」「数種の動画配信に加入すれば高額になる」など、慎重論も聞こえる。