テレビ視聴を侵食し始めたネット視聴

米国で人気沸騰中のインターネット上の番組配信サービスがテレビ視聴時間をじわじわと侵食し始めている。米視聴率調査会社ニールセンがこのほど発表したところによると、米国市民が今年79月期にテレビを見た時間は月平均141時間(一日4時間32分)と、昨年同期の147時間に比べ4%減少したことが分かった。

一方、ネット上で配信される動画(番組)を見た時間は同期11時間で、テレビ視聴時間には遠く及ばないものの、昨年同期7時間から60%増と急伸している。同調査によれば、これまでデジタル・ビデオ(ネット上の動画)を敬遠していたとされる55歳以上の層も同視聴時間が前年同期比50%以上増えており、もはやデジタル・ビデオ視聴は若者層に限定された傾向ではないことを示している。

ニールセンは、「会員制オンデマンド(SVOD)サービスへの加入数の増加は、従来のテレビ視聴率にインパクトを与えていることを意味する」と指摘。米調査会社サンフォード・バーンスタインのアナリストも、「SVODがテレビ視聴率低下の元凶であるとの確固たる結論に達した」と強調している。米国内だけでも3700万人以上の加入者を抱える人気動画配信サービス「Netflix(ネットフリックス)」などがテレビ視聴に大きな影響を与え始めていることを示唆したものだ。

デジタル視聴の急増が大きな懸念材料になりつつある既存メディアは、一斉に番組をSVODサービスにシンジケーションする動きを加速させているが、メディア業界アナリストの中には「SVODから支払われるライセンス権料が視聴率低下による広告収入を相殺するというシナリオは現実的ではないかもしれない」と悲観的な見方を示している。

ところで、今回のニールセン調査では人種別の視聴習慣の違いも浮き彫りになった。黒人によるテレビ視聴時間は月平均201時間43分(1479月期)と全体の平均テレビ視聴時間を上回っているばかりか、ヒスパニック系(母国語がスペイン語のラテンアメリカ系市民)の117時間、アジア系市民の82時間を大きく上回っている。

また、アジア系市民を見ると、同期におけるテレビ視聴時間が前年同期比6%の減少になっている反面、デジタル・ビデオ視聴時間は前年同期比17%も上昇しているのが特徴だ。同グループ内のタブレット型情報端末の普及率も前年同期比17%上昇していることも報告されており、必ずしも偶然の一致ではないかもしれない。

<テレビ朝日アメリカ 北清>