米地上波テレビNBCネットワークが全国向けに毎晩放送するニュース番組『NBCナイトリー・ニューズ』のキャスター、ブライアン・ウィリアムズ氏が2月9日より当面番組から降板することになった。同氏の報道ぶりにウソがあったことが発覚し、米メディア界はもとより、視聴者からごうごうたる非難を浴びている。降板を訴える大合唱も巻き起こり、NBCは冷却期間を置かざるを得ないとの判断に至った模様だ。
問題は同氏がイラク戦争を取材中の2003年、搭乗したヘリコプターがロケット弾に被弾し、緊急着陸を余儀なくされたとの報道を繰り返してきたことだ。実際に被弾したヘリコプターの乗組員が今月にはいっても同氏が同様なコメントを続けているのを見て、「ウィリアムズ氏は私のヘリコプターには乗っていなかった」とソーシャルメディア上で暴露、これを米軍関係者向けの新聞「スターズ・アンド・ストライプス(星条旗新聞)が報道したことで表面化した。
これを受けてウィリアムズ氏は番組中で、「自分が乗っていたヘリコプターと被弾したヘリコプターをなぜ一緒くたにしてしまったのか自分でも分からない」と謝罪説明したが、「自分のヘリコプターが被弾したかどうかを忘れてしまうなんて信じられない」などと懐疑的な声が支配的だ。
イラク戦争に参戦した米兵士らからウィリアムズ氏の降板を求める声が上がったほか、有力紙ニューヨーク・タイムズ紙は6日付けの一面で「今回明らかになったことは、米国で最も知名度が高く、崇拝されているジャーナリストの信頼度が著しく失墜ことだ」などと論評。タブロイド紙は「ウソつきブライアンの戦争スキャンダルがNBCを炎に包んでいる」などときわどいヘッドラインで大きく取り上げている。
ナイトリー・ニューズとともにABCネットワークの『ワールドニュース』、CBS『イブニング・ニュース』は3大ネットワークが全国向けに放送する権威ある報道番組。各番組のキャスターはアンカーと呼ばれ米テレビジャーナリストとが目指す最高峰。それぞれ「ネットワークの顔」的存在。ウィリアムズ氏はつい最近推定年俸1000万㌦5年契約を結んだばかりだ。
ナイトリー・ニューズは平均視聴者数940万人(2014年)と3大ネットワーク中のトップ。NBCは社内に調査委員会を設置。イラク戦争とともに05年のハリケーン「カトリーナ」の取材時に同様なウソや誇張報道がなかったか調査を始めた。