アメリカ・フロリダ州で2歳の長女を殺害した罪などに問われ、殺人罪では無罪評決を受けた母親のケーシー・アンソニー被告(25)に対し、フロリダ州オレンジ郡裁判所は偽証罪で実刑判決を言い渡しました。ただし、刑期はこれまでの勾留期間などでほぼ相殺され、アンソニー被告は13日にも出所する見込みです。
ケーシー・アンソニー被告は、当時2歳の長女ケーリーちゃんを殺害したとして
2008年10月に逮捕されました。アンソニー被告は殺人や児童虐待、偽証罪など7つの罪に
問われましたが、5日の評決で偽証罪以外は全て無罪を勝ち取りました。
7日の法廷でフロリダ州オレンジ郡裁判所は、陪審員から有罪評決が下された4件の偽証罪について、
最大の刑期となる禁錮4年、罰金4000ドルを言い渡しました。ただし、3年近くに及んだ起訴後の
勾留期間が差し引かれるほか、拘置所での態度が良かったため、刑期はほぼ相殺され
今月13日にも出所できる見込みです。
アンソニー被告は、これまでとは打って変わって髪を垂らし、笑顔で入廷しましたが、
判事が実刑を言い渡すと険しい表情を見せました。
出所後のアンソニー被告を待っているのは、必ずしも平穏な生活ではありません。
地元局のインターネットアンケートでは、8割近い人が無罪評決後も、アンソニー被告の有罪を信じています。裁判所の外では、「ケーリーに正義を!」と叫ぶ人々が、ケーリーちゃんの遺体を模して、口に粘着テープを貼って抗議のデモを行いました。
アンソニー被告は、2008年6月にケーリーちゃんが死亡した後も、一ヵ月にわたって警察に通報せず、交際相手と飲み歩いていました。7月にアンソニー被告の母親が孫の失踪に気づき通報した後は、「ベビーシッターに誘拐された」と嘘の供述をして、警察が数ヶ月にわたる大捜索をすることになりました。アンソニー被告の行為は、家族は大切にするべきと考えるアメリカ人の琴線に触れ、怒りを呼んだのです。
今回の事件を受け、フロリダ州やニューヨーク州など4州では、“ケーリー法”を制定しようとする動きが出ています。子供が死亡した場合は、24時間に通報する義務と、12歳以下の子供が失踪した場合は速やかに通報する義務を親に課す内容です。2歳の女の子が失踪の半年後に無残な遺体で発見された事件そのものと、倫理的に逸脱した被害者の母親の行為を罰することが出来なかったことが、アメリカ人にとってはショックだったのです。
<NY支局 山野孝之>
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