
連日、アメリカのメディアが大きく報道している「ケーリーちゃん事件」の裁判の詳報です。被害女児の可愛さと被告となった母親が美人だったことも注目を集めている理由と見られるが、「娘の失踪後にバーで連夜遊びほうけていた」などの被告の行動が家族を重んじるアメリカ人の琴線に触れた。
【事件の概要】
事件の発覚は、2008年7月。フロリダ州オーランドで当時2歳のケーリー・アンソニーちゃんが行方不明になったというケーリーちゃんの祖母からの通報がきっかけだった。祖母によるとケーリーちゃんの姿が見えなくなったのは通報の1ヶ月前の6月。通報から3ヶ月。検察は、ケーリーちゃんの母親ケーシー被告(25)を殺人罪などで起訴した。2ヵ月後の2008年12月、ケーリーちゃんの遺体は、自宅近くの森の中から見つかった。検察側の宣誓供述書作成などに時間がかかり、裁判の開始は事件発覚から2年半が経った今年5月までずれ込んでいた。事件がこれまでに大きく報道されたことから、陪審員は別の郡から選ばれた。
<公判初日 5月24日(火)>
ケーシー被告の弁護人の弁護方針は、殺人ではなくプールでの事故死。
この日の主張では、シングルマザーのケーシー被告が父親や兄から性的虐待を受けていた被害者という印象も付ける戦術を取った。
弁護人
「自宅のプールで溺死したのを父親とケーシー被告が発見」
「ケーシー被告が8歳の頃から父親と兄から性的虐待を受けていた」と主張。
しかし、このあと検察側の証人として出廷したケーシー被告の父親は、
冒頭陳述で非難された娘への性的虐待の事実と、自宅のプールで溺死した孫を引き上げて隠蔽しようとした事実の両方を否定。
<公判2日目 5月25日(水)>
検察側はケーシー被告が、ケーリーちゃん「失踪」当時に付き合っていた
ボーイフレンド、トニー・ラザロさんと、彼の友人(ルームメートやバーのメイドなど)ら8人を証言させた。
検察の主張は、ケーリーちゃん失踪の1ヶ月前にあたる2008年5月中頃から
ケーシー被告は当時のボーイフレンド・ラザロさんと親密な関係になり、6月中旬には彼の家に入り浸るようになった。ケーリーが「失踪」したのも6月中旬。
<公判3日目 5月26日(木)>
当時のボーイフレンド、トニー・ラザロさんが前日に引き続き、証言台に立った。
この日は他にも、ケーシーの父親、ケーシーの過去のボーイフレンド数人、男友達、
女友達など。女友達は証言で、ケーシーが車の中で携帯電話を切ったあとに
誇らしげに「オー、マイゴッド。私ってすごい嘘つき」と発言したと証言
<公判4日目 5月27日(金)>
ケーシー被告が乗り捨ててレッカーされた車についてが主な論点になった。
車のレッカー会社の関係者らが、「車の中から異臭がした」と証言した。
検察側は市街地にある防犯カメラの映像を流した。そこには娘が死んでいるにも関わらず買い物を楽しみ浮かれているケーシー被告の姿が映されていた。
<公判5日目 5月28日(土)>
この日の証人は、ボーイフレンドのラザロさんと母親のシンディの二人。
ラザロさんの証言
「地元のニューヨークに6月30日から7月5日まで帰っている間、
毎日ケーシー被告と電話で話した」
「7月5日にフロリダに戻ったあと、ケーシー被告の母親が警察に通報する7月15日まで
毎晩、ケーシー被告と過ごした」
「その間、特に変わった様子はなかった」
「ケーリーが失踪もしくは死亡した6月16日には、レンタルビデオで映画を借りて
ケーシー被告と二人で観た。(レンタルビデオの当日のレシートを提示)」
「7月15日に母親が自分のアパートにやってきてケーシーを連れていった。
ここで初めてケーシーの娘、ケーリーが行方不明だと知った」
「7月16日、電話とテキストメッセージでケーシー被告とやり取り。
ケーリーの失踪について問い詰めた(テキストのやり取りのコピーが提示された)」
ケーシー被告の母親シンディさんの証言
「ケーシー被告が6月16日以降、さまざまな言い訳をして家に帰らなくなった」
「孫のケーリーとは一切話をさせてくれなかった」
「言い訳は非常に上手で納得できるものだった」
「次第に何かおかしいと思うようになり、そのうち娘が嘘をついていると確信した」
<公判6日目 5月31日(火)>
前日に続き母親シンディさんが証言台へ。
2008年7月15日に、自ら911に電話したときの録音テープが再生され、
それを聞いたシンディさんが証言台で泣き崩れた。
<公判7日目 6月1日(水)>
ケーシー被告の兄のリー(フロリダ州オーランド在住、無職)が初めて証言。
父母と同様、自分の妹を疑っていることを示す証言をした。
「ケーリーがどこに行ったのかケーシー被告に聞いたら、ベビーシッターに預けている
と言われたが、ベビーシッターがいることを知らなかったので驚いた」
「ベビーシッターの名前も聞いたが、聞いたことのない名前だった」
「7月15日(通報した日)に実家に来るように父親に言われたので行った。
車庫にあった車(ケーシー容疑者のもの)の窓がすべて開いていて、
そこから異様な匂いがした」
<公判8日目 6月2日(木)>
検察側は、留置所でのケーシー被告と両親・兄との面会の様子を収録したビデオを公開。
ビデオには、両親が孫のケーリーの行方を必死になって問いただすのとは対照的に、
ケーシー被告がまるで他人事のように冷静で自分のことばかり気にしている様子が映し出された。また、性的虐待を受けてきたと主張している父親や兄に対して、全く恐怖心を
抱いていないように見えた。ケーシー被告の弁護側の主張どおりなら、孫の死をすでに
知っているはずの父が、孫の行方を気にして絶望的な様子。
<公判9日目 6月3日(金)>
捜査官の証言
「ケーシー被告の車を開けると死体の腐敗臭がした」
「死体の腐敗臭は独特で一度嗅いだら忘れない。」
<公判10日目 6月4日(土)>
FBI「毛髪検査官」の証言
「車の中から出てきた被害者ケーリーのものと思われる毛髪に、毛髪が死んでから抜けたことを示す「バンディング=縞模様?」という反応と似た特徴がある」
検察側は、ケーシー被告が車にケーリーちゃんの遺体を積んでいたことを示すと主張。
<公判12日目 6月7日(火)>
FBI科学捜査官が証言。
「ケーシー被告の車からクロロホルムの反応が出た」
検察側は、ケーシー被告がクロロホルムを使ってケーリーを窒息死させたと主張。
これに対し、弁護側は反対尋問で、少量のクロロホルムなら掃除用洗剤からも出るとの
証言を引き出すことに成功。
<公判13日目 6月8日(水)>
地元警官の証言
「警察犬(死体の匂いを嗅ぎ分ける訓練を受けている)が、ケーリーのプレイハウス
(遊具の家)の近くの芝生から人間の死体から出る腐敗臭を嗅ぎ分けた」
「掘り起こしたが何も見つからず、翌日にもう一度、掘り起こされた芝生の匂いを嗅がせ たら腐敗臭を嗅ぎ分けられなかった」
検察側は、遊具付近には死体は遺棄されず、一時的に放置された可能性が高いと主張。
デジタルデータ(ケーシー被告のパソコンに残されたデータなど)の分析官の証言
「ケーシー被告がケーリーちゃんを預けたと主張しているベビーシッターの名前は
08年7月16日(最初に逮捕される日)以前には、パソコン内に記録が無かった」
「ケーリーちゃん失踪の約3ヶ月前の3月17日~21日の間に、ケーシー被告のパソコンで クロロフォルム、首の折り方、家の日用品を武器にする方法をキーワードに検索を行った 記録があった」
弁護側の反論。
「それらのサイトには数秒から数分しかアクセスしていない」
「他にも脾臓破裂、ゾンビの侵略、自己防衛、カンフーアート、など“不適切な”
検索キーワードも記録にあった」 として「クロロフォルム」や「首の折り方」を検索しただけで、事件と関連付けることに無理があると反論。
<公判14日目 6月9日(木)>
兄のリー・アンソニーの証言。
「ケーシー被告が2008年7月15日に、娘のケーリーがベビーシッター誘拐されたという
話をしたが、翌16日には矛盾する内容を話していた」
このあと、ケーリーの頭蓋骨が発見されたときの911コールの録音テープが流された。
検視官が、「ケーリーの骨の一部が動物によってかじられていた」と証言すると、
ケーシー被告は涙を流した。ケーシー被告の具合が悪くなり、昼で公判は打ち切り。
<公判15日目 6月10日(金)>
法医学者の証言。
ケーリーちゃん頭蓋骨にダクトテープ(粘着テープ)がついていたことを補強する証言。
「(発見時のケーリーの遺体を見て)これだけ腐敗した死体で、
下あごの骨と頭蓋骨がくっついたままというのは通常ではあり得ない」
「ダクトテープなどが下あごの骨と頭蓋骨をくっつける役割を果たしたと
ほぼ断定できる」
検視局長の証言
「三つの事実がこれが「他殺」であることを示している。
1直後に通報されていない。
2. 死体を隠したり、密閉性のあるものに死体をくるんでいる。
毛布に包まれ、麻布のランドリーバッグと二重にしたゴミ袋に入れられていた。
3. ダクトテープで口が塞がれていた。死体にダクトテープを貼る必要はないので、
生きているときに貼った」
「過去の経験や実績から言うと、特に事故でおぼれた場合はほぼ100%が
直後に通報されている」
<公判16日目 6月11日(土)>
法医昆虫学者の証言
「ケーリー被告の車のトランクにあったゴミ袋から発見されたハエは、
棺おけバエと呼ばれ、通常は腐敗の初期段階の死体から発生する種類のハエ」として
遺体を車に乗せていたことを示唆した。
CSI法医学スーパー・バイザーの証言
「現場にあったものと同じゴミ袋(黒いプラスチックバッグ)が、
アンソニー家から発見された」
「口を塞いでいたのと同じダクトテープの一片を小屋で発見」
<公判17日目 6月13日(月)>
FBI毛髪検査官の証言
「ヘアブラシから採取した毛髪、車のトランクから採取した毛髪、
そして遺体の頭蓋骨から採取された毛髪は、同一人物のものの可能性が高い」
<公判18日目 6月14日(火)>
母親シンディさんの証言
「2008年7月から遺体が発見された同年12月11日の間に、
家からケーリーのテディベアの人形のひとつとプーさんの毛布が無くなっていた」
「ダクトテープが一片しか発見されなかったことに対して、人探しのポスターを貼るとき に使ったためそれしか残っていなかった」
ケーシー被告にタトゥーを彫った刺青アーティストの証言
「2008年7月2日(ケーリーちゃん失踪後数週間)にタトゥーを彫った」
「数日前にアポイントを入れる電話をして、Bella Vitaという文字を女性っぽい
フォントで入れてほしいとの要望を伝えた」
「タトゥー代65ドルをキャッシュで払った」
「特に変わった様子はなく、ハッピーそうだった」
「7月15日に店に立ち寄って、19日に自分と友だちがタトゥーを彫りたいから
アポイントを入れてほしいと言って去った」
「娘はどうしてるのかと聞いたら、ベビーシッターと一緒だと言った」
「19日には娘も連れてくると言った」
<公判19日目 6月15日(水)>
検察側の証人による証言がすべて終了したことを宣言
<公判20日目 6月16日(木)>
弁護側の証人による証言の初日。
FBIでこの事件のDNA鑑定を担当した検査官による証言からスタート。
「遺体に貼られていたダクトテープからケーシー被告のDNAは出てこなかった。
ケーシー被告の家族のDNAも出なかった」
「検出されたのは鑑定を担当した別の検査官(助手)のDNA。
検査官のミス(?)で、彼(彼女?)自身のDNAが付着してしまった」
「車のスペアタイヤ用カバー(ケーシー被告の車のトランクにあったもの)からは
血液やDNAは検出されなかった」
「遺体発見現場にあったケーリーのシャツからは血液反応らしきものは出たが、 血液か
どうかは断定できない。DNAも検出されず。現場にあった洗濯用ビニール袋も同様」
「遺体発見現場にあった短パンからは血液も精液も検出されず」
「ケーシー被告が近所から借りたと言われるショベルからは血液反応なし。
DNAも個人が特定できるレベルのものは採取できず」
このあと、弁護士がこのFBI検査官にしたある質問で廷内は騒然とした。
質問とは「ケーシーの父ジョージと実兄リーのどちらかが、死亡したケーリーの父親であるかどうかのDNA鑑定を依頼されたか?」というもの。
直後に検察官は異議を申し立てて、公判は一時休廷となった。
その後証人は、ケーシーの父親・実兄ともDNA鑑定が行われたものの、どちらも殺されたケーリーの父親はないことが判明したと証言。
止