連日、アメリカのメディアが大きく報道している「ケーリーちゃん事件」の裁判の続報です。
【事件の概要】
事件の発覚は、2008年7月。フロリダ州オーランドで当時2歳のケーリー・アンソニーちゃんが行方不明になったというケーリーちゃんの祖母からの通報がきっかけだった。祖母によるとケーリーちゃんの姿が見えなくなったのは通報の1ヶ月前の6月。通報から3ヶ月。検察は、ケーリーちゃんの母親ケーシー被告(25)を殺人罪などで起訴した。2ヵ月後の2008年12月、ケーリーちゃんの遺体は、自宅近くの森の中から見つかった。検察側の宣誓供述書作成などに時間がかかり、裁判の開始は事件発覚から2年半が経った今年5月までずれ込んでいた。事件がこれまでに大きく報道されたことから、陪審員は別の郡から選ばれた。
<公判21日目 6月17日(金)>弁護側の証言 2日目
法医昆虫学者の証言
ケーシー被告の車のトランクから発見された虫は証拠としては不十分で、そこで遺体が腐敗したことを示してはいない。
トランク内で発見されたシミについても遺体の腐敗によるシミの特徴と一致しない。
ブタの死体で、同様の状況(密閉した車の中に放置)で実験したところ、遺体の腐り始めの段階で数百匹~数千匹のハエとウジが発生しているが、ケーシー被告の車ではそうなっていない。
<公判22日目 6月18日(土)>弁護側の証言 3日目
法医人類学者の証言
警察の報告書によると、遺体が「最初どこに放置されたか」の検証が行われていない。遺体の腐敗によってその場所に環境の変化が現れているはずなので、それを探せば現場が特定できるはず。
ダクトテープが顔のどこに貼られていたかは特定できないはず。
⇒ 腐敗の過程で肌の組織が動いてしまってうことや、動物によって肌が離断することがあるため。 (ただし、この証言が行われたとき、陪審員不在)
法医病理学者の証言
・ケーリーちゃんの検視は手抜き。頭蓋骨を水平に切断していない。
⇒ 薬物を使用した際に、脳に現れる黒い斑点を確認できない。
⇒ この証言に対し、検察側は、こういったケースのすべての検視で頭蓋骨を水平に切断するわけではなく、あくまで一意見に過ぎないと反論。
・ダクトテープは遺体の腐敗が始まったあとに貼られたもの
⇒ この証言に対して検察側は、ダクトテープに毛髪がついていたことや、頭蓋骨、下あご、ダクトテープを通って植物の根が生えていたことなどを示し、この証言は間違いだと反論。
この法医病理学者は、被害者の名前を被告のケーシーと間違えたり、死亡した際の周囲の状況などをきっちり把握していなかったりと、やや心象が悪い。
<公判23日目 6月20日(月)>
弁護士による、「裁判所の証拠開示命令違反」により、この日の証人出廷はなし。
<公判24日目 6月21日(火)>
ケーシー被告が収容されているカリフォルニア州オレンジ郡の拘置所に一時期、「子供が自宅のプールで溺死しているのを、子供の祖父が発見して通報する」という経験をした入所者(女)がいた。これはケーシー被告の弁護側が主張する、ケーリーちゃんの死亡時の状況と似ている。(ただしケーシー被告の場合は、「通報せずに祖父の助言で事実を隠蔽した」という主張)ケーシー被告とこの女の独房は隣り同士だったという。女の名前はApril Whalen。薬物所持や窃盗などで、2000年以降計10回オレンジ郡の拘置所に収容されたことがある。
⇒ 「ケーシー被告がこの女の話を真似た作り話をしている」という印象を与えるのが狙いか。
・先週末、検察に電話で匿名の情報提供があった。詳細を現在も調査中。
・二人が同時期に拘置所にいたことは確認(CNNによると2009年6月4日~8日)されたが、そこで二人が直接接触したかどうかは確認されていない。
・自身は「ケーシー被告とは話していない。」と言っている。
・拘置所の壁は防音設計ではないため、壁伝いに聞いたとも考えられる。
<公判25日目 6月22日(水)>
この日は、裁判官の都合(判事関係者のミーティング)で公判は半日のみ。3人の法医学関係者による証言(弁護側)が行われた。
証人1: FBI法医地質学者
・ケーシー被告の車と家から押収した物品(ショベル、靴22足ほか)を検査した。
・靴から、遺体が見つかった現場の土壌と一致する物質は発見されなかった。
・(反対尋問に対し) だからといって現場でその靴をはいていなかったとは断言できない。
証人2: FBI法医毒物学者
・遺体から取った毛髪から薬物(クロロフォルムなど)は検出されなかった。
・(反対尋問に対し) クロロフォルムなどの薬物を検出するのに、必ずしも毛髪が適当とは限らない。
・( 〃 ) 薬物が使われて間もなく死亡した場合は、毛髪から検出するのは困難。
・たとえ検出されたとしても、いつ、どのくらいの頻度で使われたかなどは判断できない。
証人3: セントラル・フロリダ大学 化学教授
・ケーシー被告の車の車内の空気を採取して検査
・クロロフォルム、ガソリンなど揮発性の高い物質が検出された。
・遺体の腐敗によって発生する物質は検出されなかった。
・(反対尋問に対し) 2008年7月21日、トランクを1インチほど開けて中の空気を採取しただけで、トランク全体を調べたわけではない。
・その前日(7月20日)にトランクの内張りが取り外されていたことを、証人が知らなかった。
・検察の主張によると、その内張りについたシミからクロロフォルムが検出され、前日(7月20日)に証拠として取り外され押収された。 ⇒教授がトランク内の空気を採取したときは、シミがついた内張りが取り外された後。